marukashi’s diary

色んなラノベの感想上げます。チラムネ界隈では「裕夢こんにゃろうの人」で関係者の中で話題です

千歳くんはラムネ瓶のなか 6巻感想 ※ネタバレ有

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[あらすじ]

私を見つけてくれて、ありがとう

すべては変わってしまった。唐突に、劇的に。どうしようもないほど残酷に。けれど、ひとりで塞ぎ込む時間を、彼女は与えてくれなかった。「あの日のあなたがそうしてくれたように。今度は私が誰よりも朔くんの隣にいるの」――1年前。まだ優空が内田さんで、俺が千歳くんで。お互いの“心”に触れ合ったあの日。俺たちの関係がはじまったあの夜を思い出す。優空は言う。「大丈夫、だいじょうぶ」月の見えない夜に無くした何かを、また手繰りよせられるというように。……俺たちの夏は。まだ、終わらない。

 

 

 ついにでました、人気沸騰中のチラムネ6巻。何を書こうかと迷いますが、ひとまずは物語の順番で感想を書いていくことにします。 大体2万文字くらいは書いているので、一気に読んでくれるでもいいですし、ちょっと時間はかかりますが、2回目3回目読むときの片手間にこの感想を見てくれると嬉しいです。でもやっぱり何より熱を込めて描いたこの感想を、まぁ感想というより読みながら実況みたいなものですが。それを読んでくれることが、何よりも嬉しいです。

 

 プロローグは優空のお話。優空の心の外と内、秘めた思いと大っ嫌いな人。真っ暗闇の中から、私を見つけてくれた人。新月に願った、普通の想い・・・

 2巻以降のプロローグは物語の始まりを告げる鐘の音のような、ヒロインの心情描写から始まっていくので、自転車で坂道の駆け上るような感じに力強く、チラムネという世界に入り込ませてくれます。すごい(語彙力)。ネタバレ有だから普通にいうけど、ここにあった『本当は大切にしたかった記憶を。』は、まず間違いなく優空の母親のことなんだと思います。優空は一年前までは家族を困らせまいと、家を出ていった母親がいつも言っていた「普通」という言葉に囚われ、波風立てず生きていこう、生きていくと決めていたのを、そのために張っていた透明な壁を、朔にすんなり破られて、『本当は望んでいなかった普通という言葉を、本当はずっと息苦しかった生き方を、本当は大切にしたかった記憶を』「本当は大切にしたかった母親との思い出を」『真っ暗闇を、照らし出してくれたから』

 

 五章から物語が始まっていきましたね。サックスを吹く優空と、その音に包み込まれてる朔。夕湖を放っておいていいはずのない優空が、朔のそばにいる・・・。そんな状況を朔は拒むも優空がいつもどおりに接してくる。それはきっと優空が選んだ「一番」なんだと思いました。例え親友だったとしても、それが心の中の一番とは限らない。

優空はあのなかで、唐突に起こった出来事なはずなのに、自分が心に決めていた、自分のするべきことをしていたのは、自分の芯があったからなのかなって思いました。

 

 『答えなんて、最初からわかってたのに。”理由はある”、決断したのも自分だ』

 答えがわかっていたのに、夕湖が告白したのには”理由がある”ってのは、単純に考えれば後に朔が説明していたことに結びつきますが、実際の理由は別にあって、その理由の根本を、最初を優空が経験してたから、優空が最初にわかったのかなって思いました。・・・あれ、これ今後の物語の感想書くとき内容被りそうだな・・・まいっか。

 朔がいなくなった教室で、最初に動き出した優空。一瞬目が合って、泣きだしそうに顔を歪めた優空。ちゃんと選んだことにほっとしたような夕湖。でも、それでも、心から大切に思える親友と、好きな人が同時に私の前からいなくなっちゃったら、それはもう叫ばずにはいられないよね。

 教室を飛び出していく夕湖、それを追いかける海人。海人がどれだけ優しくしても、どれだけ夕湖のために人を殴れても、夕湖はそれが朔だったらいいなと思っている。それに気づいてなお夕湖に手を差し伸べる海人は・・・夕湖のために感情を殺してる海人は、掛け値なしに漢だと思います。

 陽がシュートをし、悠月がそれを眺めて自分の心と向き合って、ご飯を食べに行くとき、芝の上にごろんと寝転がったとき、彼女たちがぎゅっと手を繋いだのはエモエモエモーショナルだと思います。二人は一年以上相棒をやっているからこそ、互いの心の内がわかっているからこそ、互いを慰めるわけでもないからこそ、どちらともなく、ぎゅっと手を繋いだのだと思います。ここの挿絵ほしかったなぁ・・・

 健太と和希が一緒に帰るとき、和希は本心を語ってました。そこで気づいた健太の本心『それって神のせいってことに、なるの?』という言葉。そのあとに書かれている『俺だからこそ』ってのは二つの意味があると思います。一つ目はそのあとにもあるように、健太は朔に救われたからってのと、一応面子があれでも「仲のいいグループ」の瓦解を唯一経験してるから、あのセリフが出てきたのだと思います。それこそ今この状況において一番理解しているのは優空を除けば健太な気がします。さすが神。

 それ自体には気づいていた和希、かばう気はないが攻める気もない。でもなんであんな言い方をしたのか、理由が『悠月が、哀しそうな顔してたから』っていうもっともらしいかわいい理由だったので、やっぱり5巻から和希の株は爆上がりですね。今度非公式応援垢でメンズ選挙があったら和希に入れます。

 

 優空が料理してる間、朔は風呂に入り、嫌でも起きたことを振り返ることになります。そのなか、最後の方にあった『自分自身の気持ちにさえ向き合っていないのだから』とあります。僕は読んでいるとき、「夕湖ではない誰かではあるが、少なくとも夕湖ではないから」って感じなのかと思ってました。ですが物語終盤で明かされて、認識を「夕湖ではない誰かではあるかもしれない、だが夕湖ではないというわけでもない」という風に改めました。夕湖にとってのトクベツは朔しかいない。では朔は?朔にとってのトクベツは誰なの?ってなったとき、それは夕湖であり、悠月であり、明日姉であり、陽であり、優空でした。果たしてそれが、どれが恋と呼べるトクベツなのか、これは誰にもわかりません。朔にもわからないのですから。これで言えば、読者にとって、誰エンドで終わるかはまだわからないが、少なくとも夕湖ではない。ではなくなったので、最高の形といえるかもしれません。

 たしかに、5巻までに朔の家のシーンはちょくちょくあり、そのなかにこれとかあれとか夕湖のものっていう描写がありましたが、最終的にこのオムライスのシーンに繋がってくるのって、おそらく裕夢先生自体にも意図があったわけではないかもしれませんし、あったかもしれませんが、なんというかもうずるいです。許しません。

 あと関係ないですが、オムライスを食べて泣いてるシーンを見て、「Charlotte」の乙坂有宇を思い出しました。てかまって、この挿絵見て重大な真実に気づいた。これに気付けたの天才では・・・

 優空が朔の家に泊まることにはまぁ違和感がなかったんですが(それはそれでおかしい)優空が、『私のことをそういう女の子として扱ってくれてるんだね』って言って、朔が否定してない時点で一つ気づけたはずなのでは今更ながらに思いました。まずここで否定しないってことは朔の心の中には優空がいることになります。ですが優空はおちゃらけて「お母さん?」と返しています。つまり優空自身が「彼の中には私がいる。だけど私だけがいるわけじゃない」と考えていたのかなと思うと、やはり6巻の半分以上が優空の手中にあったのかなと思いました。・・・深読みしすぎてるかな?

 朔がごねていると悠月の話を出したり『これが初めてってわけでもないんだし』ってあったので、絶対過去に優空が変わったきっかけのタイミングで泊めたんだなって確信しました。ていうか『あの日のあなたがそうしてくれたように。今度は私が誰よりも朔くんの隣にいるの』って言ってるからまぁそうだよなって思うよね。

 さてここからは優空と続くもののみんなと会う展開が起きてきますね。覚えている方がいるかはわかりませんが、僕の書いた5巻考察の記事の最後の方に、みんなと会う展開があるのでは?と予想してましたがちゃんとありましたね!ただ夕湖はなく、代わりに和希&健太があったのと、場所の予想はしっかり外れました!悔しい・・・
 はいではまずは明日姉から!さっそくいつものパンチを入れてくる明日姉に、反応しづらくなっている朔、『用事がないと、かけちゃ駄目?』とかいう明日姉クッソかわいいわ。ちなみにここで豆知識、5巻で口絵がなかった明日姉は挿絵が2枚ありました。今回では口絵があって挿絵がなかったですね。ここはおそらく本編ではラノベ自体の挿絵限度的な何かか、raemz先生の仕事量的な何かであった枚数によって仕方なく削った。その代わりの口絵なのでしょう。明日姉かわいかったよね。

 朔の口調や口ぶりから何かあったことを察する明日姉。蚊帳の外は哀しい。一年の距離があるからこそ、知らない傷は深いものとなる。だからこそ、普段は関われないことによって、朔の気障ったらしい行動によって、部活のことを一番に相談した君が、何も言わずに野球を再開したのは嫌だったんです。もちろんそれがすれ違いによって起きたのだとしても、例えそれでも、嫌だったから『もう二度とっ!』の語気が強くなったんでしょう。話を聞くことしかできない明日姉が、何か当事者になりたくて、だから強くなったんでしょう。朔は人のことは考えて、手を差し伸べることはできるけど、人の立場になって考える。はあまりしてこなかったのかもしれません。

 事情を聞いた明日姉は、「こんな話をさせてごめんね」って意味で『ごめんね』といったのではなく、「思い出させてごめんね」って意味で『ごめんね』と言ったんだと思います。前者だと、明日姉がそう思うような人間ならまず聞いてこないと思います。「何かあったんだね」で済ませて、別の話をしたかもしれないです。後者であれば「そんなことがあったんだ。つらい思いをしてるのにその傷に触れてごめんね」って感じの意味なんだと思います。明日姉は編集者を目指している身。そして色々な作品、文章に触れてきた身。作家ではないけれど、それでも文章と密接に関わる仕事を目指しているから、伝える言葉が見つからない。だからこそ、朔は何よりも救われたんだと思います。ただ『つらいね』という言葉が、何よりも朔の本心に近かったから、朔もぽつりと弱音を吐けたんだと思います。

 電話を終えた明日姉は、朔に起きた出来事について、頭が追いついていませんでした。きっとまたやっかいごとに首を突っ込んだんだろうなぁ。そんな気持ちで聞いた内容は、夕湖の告白という、明日姉にとっても大きな爆弾で。夏勉で一緒にいた時間。本当のクラスメイトになれたような気がした。そんな余韻が抜けない。なんて、ふわふわ浮かれてるうちに、明日姉のいないところで、勝手に物語は進んでいて、気づいたときには終わっていた。きっと、明日姉にとって、野球をまたやることになったのを伝えてくれなかったことより、今回は伝えてくれたのに、それでも嫌な気持ちになったと思います。一年違うだけで、当事者にはなれず、傍観者にしかなれない。選択する資格すら持ち合わせていない。柊さんみたいに告白してもまた学校は始まる。そこで関われる。でも私は? 私が告白したとして、想いが届かなかった瞬間に、ぷつんと糸がきれてしまう。それこそ実際にあり得ることだ。でも、もしその時朔兄と柊さんが付き合っていたら、きっと朔兄との関係はそこで終わってしまうのだ。『離れて暮らす覚悟はできてても、離れる覚悟はできていなかった』・・・明日姉推しとしては、ここの明日姉を見ていてすんごい辛かったです。他の作品でも一歳差あるヒロインは、何らかの形で繋がりはあると思います。冴えかのの詩羽先輩はゲーム制作。いもうざの彩羽はゲームや、お隣さんであるなど・・・。ゲーム制作は、完成まではずっと関わっているようなもの、お隣なんてむしろ関わらないことの方が少ない場合のが多い。でも現実にはそんなものは全くなくて、創作だからと仕方ないと思えることのが多いと思います。では明日姉は? 明日姉のこの現状は「過去に会った初恋の女の子」はちょっと創作感ありますけど「よく話す先輩」は現実でも結構あり得ると思います。そんな現実的な状況に置かれてる明日姉を見るのは、感情移入しすぎてしまって、酒を飲まないとやってられません!(飲めない)

 電話を終えた朔は、適当に時間を潰して家に戻りました。何かあった時のためにとチャイムを鳴らしたのは朔らしいなと思いました。出迎えてきた優空と一緒に部屋に戻る朔。コーヒーを準備しようとして、『もう真夜中の入り口だぞ』と言う朔、優空は『コーヒー飲んでも余裕で寝られるって”前に”』と返します。そこで朔は『っ、』ってなってますね。優空が一度目のお泊りの話をすると毎回朔は『っ、』ってますよね。まぁ現状が現状なんで仕方ないと思います。あとの『それにあのとき、すごく安心できたから』にも『そっ、か』と一度つまづいています。そこから朔は、夕湖の話をし始めました。琴音さんとの約束を破った朔、琴音さんのお願いを聞き入れることが難しくなった優空。声を震わす優空のために、チボリの音量を上げました。でも優空は、泣かないと決めていたから、涙を見せませんでした。

 

 ここからは夕湖のお話。海人が夕湖を送り届けて、海人が望んでいた夕湖の母親との接触。でも海人は自分のことはクラスメイトとだけ伝えて立ち去っていく。これはきっと、海人の思っていた接触の仕方ではないから。海人は、夕湖に紹介してもらいたかったんだと思います。だからここではすぐに帰ったんだと思います。それと、夕湖のために。

 夕湖の話を、しっかりと聞く琴音さん。四日間の出来事を枯れそうな声で全部ぜんぶお母さんにぶつけて、慰めてくれ・・・るかと思いきや、ちゃんといつもどおりの感じで『まぁ、恋のステップとしては大間違いだったねー』と言ってきました。この琴音さんの安心感ある話し方には思わずクスッっとしました。琴音さんは『私なら、絶対に夕湖と同じ選択はしない』『だからこそ』『あなたを誇りに思うよ。真っすぐここまで育ってくれて。大切な人を大切に想える子になってくれて』のこのセリフ。この時点で「夕湖は朔が好きだからって理由だけで告白したんじゃない」っ気づくべきでした。そもそも『夕湖だってわかってたんでしょ? このタイミングで告白したって、きっとうまくはいかないってこと。本当はまだ早いって』っていうセリフで、今まで告白せずとも好意を伝えてきた夕湖が今このタイミングで告白するのはおかしいはずです。読んでる時このことに違和感はあったけどその意味は全然わからなかった・・・。読み終わった今考えると、この『大切な人を大切に想える』っていうのは、単に朔に対しての気持ちじゃなくて、優空や悠月、陽に対しての『私は朔が好き‼︎』というセリフによって、牽制していた状況を白紙に戻すとまでは行かないにも、同じ立場として好きな人を見ることができるようになるためのものなんだとわかりました。これに関してはもちろん夕湖にも原因があるので、夕湖健気で泣けるとかが全くなくはないですが、そんなに大きくもないです。でも優しいすごい強い。

  

 朔と優空の二度目の添い寝シーン(少し違う)

ここで優空が夕湖の話をするのは特におかしくないんですが、それをするときの『変なの。こういうときどんな話をすればいいのか、教えてくれたのは朔くんなのに』というセリフ。これは一度目に二人で話す時に、朔は優空に「お母さんの話」を聞きました。優空にとってお母さんは「大切だけど、失くしたもの」。今の朔にとって夕湖はそれに該当する気がします。そう考えると優空のこのセリフにも納得が行きますね。

 夕湖を語る二人。最初に思ったのは、「裕夢先生にしては珍しくセリフだけだな」と思いました。ここで二人の心情描写に触れることなく。というより、二人の心情はこのままなんだ。と伝えるかのようにセリフだけを書いていて、それだけで二人にとって夕湖がどれだけ大切な存在なのかというのを思い知らされました。ずるいよ裕夢せんせ。

 二人で話してて、野球部の話になった時、優空がいつもグラウンドを見てた時に『あれ、でも夏休み中って俺』っていうこの意味、過去話の時にありますが、優空が朔の練習を見てる時、朔は走り込みをやらされてました。おそらく朔は「夏休みって走り込みしかしてないよな?」って続けようとしてたんだと思いまさ。

 この最後の地の文にある『きれいな飴玉を拾い集めていよう』というセリフ、きっとこの飴玉は夕湖との思い出という意味で出たやつなのかなって思いました。夕湖との思い出を話していようって意味で。なんでこんな表現出てくんの意味わかんない!!!!

 

 さぁここからは長い長ーい、これで1冊作れるんでないかってくらいの、優空と朔との出会いのお話。 新入生代表挨拶を任された優空、勉強より音楽をしている方が楽しかった小学生のころ、ある時期に決心してからは、家族を安心させるために毎晩毎晩遅くまで予習や復習に励むようになった。 このある時期というのは、母親が突然家を出ていったときなんでしょう。この時期から「普通」であり続けるために、勉強を頑張っていたんだと思います。小学生のする決心じゃないよね・・・

 『ただみんな、どうしていいかわからなかっただけだ。』というセリフ、最初は休み時間にも勉強をするようになった優空に対して、みんなどう接すればいいのかわからなかったんだと思ってました。でもやはりここでも母親が出てったことが関係していて、「母親のいない内田さんと、どう接すればいいかわからない」というのがあったんだと思います。

  優空にとって、『物静かな優等生』という立場は何よりも「普通」で心地良かったんだと思います。わからないことは聞かれるけど、それは自分にとっても特に問題ないことだったから、その役割があっても「普通」に近かったから心地良かったんでしょう。小学生のころなんて遊んでた記憶しかないですよ僕。もはや宿題なんてやってませんでしたし。

 中学に上がるころには「なんかみんなに勉強教えてくれるいい子」っていう、学生生活には当たり障りのない、特に何か起きるわけでもないであろう肩書を手に入れ、望んだものが手に入ったように感じる優空。この立場であれば、平和に過ごせるであろう生活を、普通に生きて行けるであろう生活を、望んでいました。最後まで読んでるからわかるけど、大きなきっかけがあったからこう考えるようになったと思う。でも読んでる時はそのきっかけがわからないから、なんでそう考えるんだろうって違和感はあるよね。おそらくそれがなかったら優空は藤志高校に来てなかったのかと考えるとうーんってなりますよね。今が幸せなら、OKです!

 入学してすぐに「物静かな優等生」という扱いを受けるようになった優空。偏差値が高い学校だから地味で大人しい子という立場ぐらいかと思ってたら、新入生代表あいさつという少し出来すぎた結果によって、早々に馴染んだ役割へと押し込んだ。でもそんなある日のホームルーム。例の事件が起きてしまった。そして最後に言った『あなたにそんなこと言われる筋合いはないと思います』というセリフ、5巻では夕湖サイドのため、優空の内心は書かれていませんでしたが、今回では書かれていますね。すっごい朔に腹を立てていて面白いです。人生ハードモードとまではいかないまでも、普通ではない体験をした優空に対して、人生イージーモードを送ってきたであろうと思う朔に対してあのセリフを言われれば確かに腹も立ちます。これは仕方ないことではあるけど、朔の家の事情を知らないからこそ腹を立てれたんでしょう。仕方ないです。

 次の日、朔と会うとやっぱりけんか腰になる優空。朔に対して敬語を使い、うまくごまかそうとするけど、やっぱり朔には見破られてる。透明の壁越しに言おうとした建前は、あっさり本音にかき消され『私、あなたのことあんまり好きじゃないと思います』この時のショートメガネっ子優空に加えてちょっとむすっとしてる表情、最高です。個人的には割とこっちのが好みだったりします。メガネめちゃ似合う。ここでもう一度朔に壁の奥を覗かれ、朔のことを完全に大っ嫌いになる優空。例の決心をしてからこんな子が現れるとは思ってなかっただろうな。たまに話してもやっぱりへらへらと壁の奥に手を出してくる朔に対して腹を立てる優空。でも唯一母親の話となった時、ちょっとそのへらへらとした雰囲気がなかったことに気付いたものの気付いただけ。

 蔵センにプリント運びを頼まれていた朔に伝言を頼まれた優空、この時蔵センが言った『お前ら、似てるとこあるよ』っていうセリフ。おそらくこれは普通に生きようとする優空と、昔に目立ち過ぎて失敗した過去を持っている朔で、仮面をつけている二人が似ているって言ったのかなって思います。仮面に関して言えば間違ってないとは思いますが、朔の仮面の理由はおそらく説明が不足なり下手なりあるので許してください。

 プリント運びを優空がし、途中で駆けつける朔。自分で頑張ろうとして階段から落ちて、なんとか朔が助けるファインプレー。千歳くんと叫んで心配する優空に名前を呼ばれてうれしそうにする朔。優空について何にも知らないはずの朔が、優空が一番欲しかったであろう言葉をかける。動悸が激しくなる優空、なんて声をかけるべきかわからずとっさに『眼鏡かけてないの、どう思いますか?』と聞く優空。そっちのがいいと言われ帰り道に眼鏡を修理に出して、コンタクトを作った。次の日朔にみられると『眉間のしわも外してくんない?』に対し、『緊張してた、だけなのに。』と返す。優空の内心可愛すぎてしんどい。今までずっと普通に囚われた優空。感情を特に出すことをしてこなかったであろう優空が、緊張して眉間にしわを寄せる姿を想像するともうかわいい。

 野球部でただ走っている姿を見つけ、まぶしく、切なく、胸が苦しくなった優空は、普段であれば絶対にしないであろう大きな声で朔を応援した。二学期になり、部活をやめた朔に対して声をかけれない優空。数週間時間が流れ次第に調子を戻してきて、ある日の帰り道に朔とショートカットの女の人が話しているのを見て、『たとえば隣にいるのが私だったら』と若干の嫉妬をしています。この時点というか、階段から落ちた時点で優空は朔に落ちてるよね多分。

 夕湖に誘われみんなで8番らーめんに行く優空。長い時間がたち、早く家に帰ってご飯を作らなきゃと焦る優空。そこに弟からの電話『父ちゃんが、病院に運ばれた』 頭のなかが真っ白になってただどこに行くのかもわからず走る優空。追いついた朔が、弟くんから聞いた事情を話す。落ち着いた優空と朔は河川敷に腰を下ろして、優空のお母さんの話を始める。 優空って朔が追いつくには河川敷まで行かないと追いつかないくらいには速いのと、体力がすごいんだな。さすが吹部。てか気になって8番から河川敷までの距離見てみたんだけど、場所によるけど一番近くて1キロくらいで、その間ずっと走ってるのやっぱすごい。

 ここからはお母さんの話、普通を愛したはずの母が、普通を捨てたことは、優空にとってはかなりのショック。だからこそ優空はもう二度と自分の前から大切な人がいなくならないように普通になろうとしてたんだと思います。切ない。小学生には荷が重すぎる内容ですね。そしてなぜそうなろうと思ったのかを朔は聞き、優空は話します。聞いた朔は『ばっかじゃねぇの!?!?!?』と叫ぶ。『いつまで九歳の可哀想な女の子でいるつもりなんだよ。あんたは内田優空だろ』と朔は言う。やっぱりこれも優空は自分では気づいていたけど、見て見ぬふりをしていた真実。あなたにそんなこと言われる筋合いなんてないと叫ぶが、朔はあるという。その証拠を見せるために家に連れていく。その証拠とは「親がいない」ということ。最終的に優空は笑い、話の続きをすることに・・・なる前に部屋のお片付けをする方を選ぶ。うん、さすが家庭的な女の子。

 優空が普通に縛られている現状を、朔は普通に答えを出す。そんな普通な答えに優空は、優空自身が本当に望んでいた世界だったと思いだす。話はまとまり、お父さんに電話をする優空。そこからどうしてか朔の家に泊まることになるのはまぁびっくり。話の最初の方にあった流れはここからだったのでしょう。ソファを寝室にもっていき、ベッドに優空、ソファに朔。二人が話すのはお母さんのこと。大切な記憶を、思い出すように、忘れないように、話し出す。きっと夕湖の話もそんな感じで、優空は切り出したのでしょう。朔が寝た後、優空はベランダに出て考えた『月の見えない夜に見つけた月を、心の真ん中に吊るしておくために。』というセリフ。いやいや普通そんな言葉でないでしょとツッコミを入れたくなります。6巻のサイン本では「見えない月を手放すな」とか「見えない月を見つけだせ」そんな感じですかね?そこから口絵のシーンに行き、YUA5(地味に夕湖のAngelsと自体が違うのは置いといて)のシーンまで行きました。内田さんが優空ちゃんに、あなたが千歳くんに。優空ちゃんが優空に、千歳くんが朔くんになるきっかけの話がこの過去編でした。うん。一言でいうならツンからデレまでの優空回でしたね。個人的にあの挿絵大好きです。

 話は元の時間軸へ、一年越しの間接キスをする優空。『あの瞬間にはまだ。理由があった、言い訳の余地があった。』というセリフ。今は『言い訳はできなくなっちゃったな』というセリフ。まぁもうわかる通り朔のことが好きなんだなという裏付けですよね。この作品、いまだ分岐ルートを残してるエロゲって感じで、やまさきさんとゆきともさんでやっている「ラノステ」で話してた「売上次第でやれること。それはやれそうだ」っていうやつ、一瞬だけマルチエンドのことかと思っちゃうよね。先の展開は彼らが描く系作家男子の裕夢先生がそんなこと決めるはずないのに、決めれるはずないのに・・・ありえなくもないよね・・・。

 惰性で夏休みを過ごす朔に、悠月や陽からの連絡が来る。悠月はいつもどおりになるように、陽は心配するかのような連絡が。この連絡の内容に悠月らしさ、陽らしさがあってとてもいいですね。良きです。あの日から通い妻をしていた優空でもさすがにお盆は遠慮する朔、そこに一本の電話が。明日姉からだ。ついに来ました推し明日姉回。おばあちゃんの家に行く明日姉と朔。おばあちゃんの方言に、今まで洗練された読者ならついていけるであろう部分には注釈をつけなくなっていたことには普通に笑いました。おこぼいはわからん。伝統について話す朔と明日姉。語るに落ちてることに気付いてない明日姉がかわいすぎてしんどい。もっとくれ。ワンピースの模様増やしてる明日姉も見てみたいです。そして朔が初めて「明日風ちゃん」呼びをしたときの明日姉の反応の挿絵がなぜないんだ!どういうことだ裕夢!・・・いやわかるよ、ここに割く挿絵のリソースがなかったんだよね・・・。それは仕方ない。なので自分で補完しておきます。てか読んでる最中にしてました。そしてくだけて方言がでてくる明日姉もすごいかわいい。明日姉はギャップの萌え萌えがすごいからほんとに好き。推しです。

 おばあちゃんの縁の話は、今の朔にとってすごく大事な話で、片っぽが端っこさえ握り締めていれば、繋がりは途切れない。人の繋がりは簡単に消えるものではないと言ってくれました。きっとそんな言葉が朔にとって必要だったんだと思います。

 おばあちゃんの家から帰る二人、そこで明日姉は遠回りしないかと提案し、受け入れてもらって『やった』と嬉しそうにしてる姿を想像するだけで人生が楽しく思えます。   さて、ここで明日姉があの話を切り出します『君はどうして柊さんの告白を断ったの?』と『君の話には、君がどこにもいないよ』と。これは最後まで読めばわかる答え。朔は断る理由を『他の女の子がいる』と言っていました。ですが明日姉は気づいていました。「他の女の子がいる。でも夕湖もいる」っていうことに。ここできっと、ほんとの意味でのタイトル回収である、君は『ラムネの瓶に沈んだビー玉の月だったから』というセリフ。きっと朔はビー玉の月だった。だからサインではいつも「月に手を伸ばせ」などを書いてました。あれは朔自身が本当のお月さまじゃなく、ビー玉の月だった。だからこそこのあと、明日姉は『ずるい心じゃ、君のお月さまになんてなれないから』と言っていたんだと思います。

 帰ってきてから優空から電話がかかってきます。『んーん。朔くんに話してどうにかなることじゃないから』というセリフで、僕は読んでいるときに家族のことで何かあったのかなと思いました。でも実際はこの日は夕湖のところへ行き、夕湖と話していたんだと思います。でも逃げられて・・・だから朔にできることはないと、自分でどうにかするしかないと言い聞かせたんだと思います。ここら辺の話は、優空がしっかりと説明してくれているのでこれで終わりでもいいかなと思います。あ、でも最後の優空の『私が・・・っ』ってところの続きはちょっと思いつかないので有識者教えてください。

 ここで悠月が朔の家に行き、優空が来ないタイミングなのは偶然にもということで。ここで悠月のセリフに『ゃっぱり、か』とあるんですが、普段LINEで見るものだと解読不可のギャル語となってしまうんですが、実際に人が発する声、悠月の心情を考えた上でのこの『ゃっぱり』を使っていると考えると、この作者は日本語で遊ぶのが上手なんだろうなと思います。ラノステ聞くと奥深いよねとも話してましたね。あれ面白いのでぜひ見ましょういろいろ。

 『似合ってない、かな・・・?』といって自信なさげに言う悠月、その挿絵のココスキポイントをあげます。1個目、ショートパンツにエプロンが何より合うよね。本来であればさらされるであろうふとももが隠されることによって見えそうで見えないチラリズムを誘う。かと思いきや実際に料理中では一切見えなくなるのがまたいい。でもしかし、場所によっては後ろは見えるのではないか?そう、後ろはエプロンで隠されることはないのだ。前を隠して後ろ隠さずのふとももを見て、後ろに興奮しないと断言できるか?するに決まってるであろう。 2個目、普段は耳にかけない髪をかけています。そのことによって生まれる耳への視線誘導。僕が何よりも好きなのは、耳が見えることよりも、かけた髪ですね。なんていうんだろう、髪の毛の先端が耳にかけることにより見えなくなり、その代わりに横のベタが見えるようになるのがいいんですよね。うまく説明できないけど伝われ。あ、ここで両方かけるでなくアシンメトリーにするのは最高です。差別化大事。3個目、これはシンプルです。後ろで髪を結んでるのがいいですよね。後ろで結んだ髪の毛がちょっとわちゃわちゃしてるのがかわいいですね。かわいいです。

 ここで朔は海人の言葉を思い出します。なので、いつものような軽口を言わず、当たり障りのないようなセリフをいいます。でもそれは悠月にとっては「いつもの千歳朔じゃない。我慢しているんだ」と感じて、泣きだしそうに唇を噛んだんだと思います。そこで無理して明るい声で笑う悠月は切なくかわいい七瀬悠月でした。 悠月が作ったっ物はなんと定食屋メニュー! 悠月は悠月で、仮面を被るタイプの人間だった。だから確かに意外かもしれない。だけど、きっと陽だったら、一番近くで見てきた相棒だったら、予想できなとかもしれないと思うと、エモいです。勝手な妄想です。一番素を見せてきた相手だからという理由で陽はわかるのかもと思いました。悠月も『そういうのはもう、やめにしたんだ』というセリフからもこう予想できます。福井県民はこういうときはカツ丼なのか。愛知県民はこういうとき何食べるんだろ・・・ 少なくともウナギはない。 味噌汁の味って、何が一番いいかって言われたら、僕は真っ先に給食の味噌汁と答えます。インスタントでは再現できない味なので大好きです。悠月の作った味噌汁もきっとそういうものだと思います。職場の食堂でも給食の時みたいな味噌汁が出てきて、メニュー的に飲めるときは絶対に飲んでます。カツ丼を食べて胃袋つかまれている朔。そういった朔に悠月が『っしゃ!』と言ってる姿を実際に見たい。4クールとか8クールとかかかってもいいので忠実に原作再現した上でアニメ化してみてみたい(無茶な願い)。ソースとりんごジュースって合うのかな・・・? 気になるな。個人的に朔とは味覚の相性がよさそうなので試してみようかしら。白飯にかけて汁丼にするのめっちゃうまいよね。ソースのたれを最後まで味わえる最高の手段。ふにゃっと笑顔の悠月を見てみたい・・・。

 ベランダで話す悠月と朔、陽は来たか。夕湖はどうしてるか。そんな話の流れで、私たちは「はりぼての美しさ」を気にしすぎる。それはきっと意地を張ると言い換えてもいいかもしれない。だからこそ悠月は、朔に対して『意地の張り方(かっこのつけ方)まちがえんなよ』と言ったんだと思います。誰よりも理解っているからこそ、誰よりも似た人同士だからこそ、こう言ったんだと思います。

 悠月を送ったあと、優空から電話がかかってきます。優空の『ほう?』ボイス聞いてみたいな。どれくらいドスが聞いているのかめっちゃ気になる。ここで怒っていると宣言した優空。『叱ってあげなきゃいけない相手はふたりいるから。』というこの二人、まぁ考えるまでもなく今の選択を続けている朔と、あれを選択した夕湖のことなんだと思います。

 今度は陽がやってきます。不器用に言葉を並べて、朔にとって今何が必要なのかをせいいっぱい考えて、自分じゃお遊びにしかならないことをわかっていて、そこで亜十夢を連れてきた陽には、笑うほかないと思います。やっぱりメインヒロインは亜十夢くんだった⁉ この二人の掛け合いって、テンポよすぎるんですよね。同じスポーツで、全力で闘った相手だからこそ。それこそ陽にとっての悠月みたいな。そんな相棒みたいな感じだから似合うのかな。

 二時間ぶっ続けで打ち合ってたわけではなく、前話してたように陽にバッティングの基本を教えたり、亜十夢がバッターボックスに入って朔がマウンドにと、楽しく遊んでいてよかったです。教えてもらってる時の陽の反応見てみたい。 亜十夢が先に帰るときに、『腹くくったら声だけはかけろ』と言ってて、しっかりとデレを見せてくる亜十夢くんの職人芸に感服しました。どんだけ朔と野球したいんだよ愛かよやっぱこの二人でエンドするのか。 雨が降ってきて、雨の中背中合わせで話す朔と陽。大切な仲間のためにしっかりと活を入れる陽。こんなやり方しかできないと言っていますが、こんなやり方は陽にしかできないと思うから、胸を張っていいんだよ・・・。

 ここでおそらく初めて、”あの日”以降の夕湖が出てきます。海人毎日来てるのって、結構タフなメンタルじゃないとしんどいよね。ちょっと違うけど青ブタで毎日翔子ちゃんのお見舞いに行く咲太をおもいだしました。 みんなの夏休みをだいなしにしてしまった夕湖、『どう謝ればいいのかわからない。まだ友達と言っていいのかもわからない。だから昨日だってけっきょく、途中で逃げ出して・・・。』のシーン。読んだ時からまず間違いなく優空だろうなと思ってました。時間軸的にはおそらく朔と陽が雨に打たれてるタイミングでしたね。その同じタイミングで海人の家に和希と健太が来たんですよね。その話はぜひbookwalkerの電子特典でお楽しみください! SSが本編と完全にリンクしてるのずるいよ先生。うそつき!

 ここで海人は自分にとっての大事な過去の話をします。夕湖にとっての朔に惚れたエピソードが教室なら、海人にとっては体育館でした。その話を海人にして、失恋したのは夕湖だけじゃないと、夕湖は一人じゃないと、手を差し伸べました。うん、海人。お前のその強さは、この作品の誰も持ち合わせていないと思う。誇っていいんだぞ。

 次は和希と健太が朔の家に来ます。マックを持ってきて食べようという和希、特に逃げることはしないんだろうけど逃げ場をちゃっかり封じてる和希はやはりやり手である。そして健太はいつまで乙女してるんだ。お前は男女と書いておとめにでもなろうとしてるのか。 そしてテーブルにマックを並べる和希、やはり朔とは味覚が合いそうだ。ビックマックのセットにファンタグレープとかもろ同じでもしや僕千歳朔ではと勘違いしそうに・・・ならないわ。ていうかビックマックってやっぱでかいからいいんだよね。コスパ的に行くならチキンクリスプが最強なんだけど。でも名前だよね。ビックだし。高校の頃は僕も運動部に所属してたから結構な量を食べはするんですけど、さすがに海人ほどは食えないですね。あいつすげぇな。

 そっからは外堀を埋めていくように今までのことを聞いてきます。とりあえず優空から聞いていき、そこからはしっかりと和希は朔を追い詰めていきます。明日姉、陽と続き『それから?』と完全に追い詰め、ここで朔が悠月の名前を出した時点でもうみんな隠す気ないよねって思ったよね。そしてここで『・・・へぇ?』と反応する和希。さすがにカツ丼を作ってくれたことに驚いていたものの、きっとこの『っ』には自分には見せてくれないであろう姿を朔に見せている。というものへの嫉妬か何かなのでしょう。和希ってチーム千歳の中では一番ギャップのある男の子なんですよね。やはり5巻から和希の株は上がりまくりです。ここで海人の話になり、和希も海人も、やっぱり幻想を、自分の格好悪さを、誰かに押し付けていたんです。だからこそ喧嘩になったんでしょう。 ここからは健太が話に入って、健太が漢を、神を見せることになります。この物語の1巻がなければ、きっとチーム千歳はここで終わっていたかもしれません。物語は、人生は、やっぱり全て繋がっているんだと思います。朔が健太を救わなかったら?そんなIFは考えたところでしょうがない、だって今がこうなんだから。きっと読者もそうだと思います。IFストーリーなんて考えたところでしょうがないんです。あれ、なんか話違うな。話を戻そう。 ここまで言われた朔はちゃんと、大切なことを思い出せました。朔が伝えた大切なことを、実行してみせた男の説得力は、きっと当時の朔ですらないと思います。今このなかで一番かっこいいのは間違いなく健太です。

 翌日は優空がご飯を作りに来ました。その帰り道、優空はお茶をしないかと提案します。そこで優空はお祭りに行かないかと誘いました。日にちは夏のクリスマスイブの日。朔は夕湖のことを考えた上で、優空のことを考えた上で、一緒にお祭りに行くことにしました。ここで朔は「俺より夕湖を優先してくれって話そう。俺もこの状況にけりをつける」と決めました。果たしてそれはかなうのか・・・

 さぁここからはクライマックスへと向かっていきます。長々と書いて今1.5万字まで来ました。二万は行きたいですね。

 先ほど約束した朔との夏祭りの準備に、この日のためにこっそり新調した浴衣を着る優空。浴衣姿を自分で確認し、ちょっとお母さんに似てきたのかなと思って笑みをこぼす優空。こんなときにあたたかい気持ちになれるのは朔のおかげ。大げさすぎる褒め言葉を望んでいた優空。でも実際には・・・。優空が願をかけるように伸ばし始めた髪の毛、あの女の子みたいに。というあの女の子は間違いなく夕湖のことなんでしょう。家を出るときに、下駄が横向きに倒れてしまったのを直そうとした優空の手は、指先が小さく震えていました。きっとこのあとに起こることに、少しばかりの緊張があったのでしょう。おそらくもう二度と友達には戻れないかもしれないという恐怖も・・・。

 朔は優空との待ち合わせ場所に立っていました。少し時間がたってから優空が来ます。優空はまず浴衣の感想を聞きだします。そこでも当たり障りのない感想を口にする朔。優空はやはりこの回答はショックで、朔にとっては最善でも、優空にとってはどうなのか。優空を気遣った結果の回答でも、それは朔にとってであり、優空のとってではなかった。この現状だからこそ仕方ないと言えるものの、ここまで千歳朔という人間が格好悪い状態でいるっていうのもなかなか珍しいですね。まぁ今回は7割格好悪い状態でしたね。 朔が浴衣できていないことに、ちゃんとショックを受けている優空。約束をしていたものの、朔の持っている浴衣の1枚は、夕湖にもらったものだからと着てこなかったのだろう。さぁここからラストへの伏線祭りだ! ここで優空は何を食べるかしっかりと迷っていました。なぜかって?この後があるからでしょう。このあとちゃんとみんなでお祭りするために、控えていたのでしょう。でも朔、あのセリフはきゅいっだよ。 ラムネを買う朔と優空、朔は優空の分を買ったのにも関わらず優空は自分で一本買う。それに何の意味があるのか、そしてなんで優空は切なそうに、祈るようなまなざしで鳥居の方を見つめていたのか、朔にはわかりません。ですが、鳥居を見るとそこには夕湖がいました。 そう、これは優空の仕業ですね。優空はどの時点からここまでの景色を予想していたのでしょうか。どれだけの想いをのせて、この行動をしているのか。それはきっと誰にもわかることはありません。うん、涙。 優空は、夕湖と朔の、手を結び、縁を結ぶように力を込めて『話を、しようよ』と持ちかけました。

 ここからは優空の今までの話です。優空は夕湖の家へ行き、まず琴音さんと会いました。やはり人生経験の差なのか、きっと琴音さんは今の現状のかなりをわかっているんだと思います。これに関して言えば夕湖と琴音さんとのシーンでも話しましたね。夕湖の行動をうれしく思う。優空たちに背負わせてしまった言葉。どれもわかっているんだと思います。夕湖から話を聞いていただけで、そこまで理解することができるのは、きっと誰よりも夕湖のそばにいた琴音さんだからできたことなんだと思います。親子の絆ってすごいね。そして拒絶された優空は次の日、もう一度夕湖のところへ行きます。今度は出た夕湖に過去の話をします。『お互いに弱さを分け合ったから』 きっと夕湖は当時そうは思っていなかったのかもしれない。けど優空はそう思っていた。三日目。最後はお風呂のドア越しに話す優空と夕湖。昨日の最後という意味を聞き出します。優空は『絶交』といいますが夕湖がそれを遮ります。でも優空は否定して、夕湖は少しだけ安心します。ここで夕湖が即答するあたり、やっぱり夕湖らしいなって思いました。自分に真っすぐに生きている人間だからこそなんだと思いました。 風呂場で手で水鉄砲を作ってお湯を飛ばして、自分の顔にかける優空。ナニソレ絶対かわいいじゃん見せてよ。絶対>_<こんな感じの顔になってるでしょ見せてくださいかわいいから。夕湖に「いつまでもそうしているなら、これからは私が朔の隣にいるから」と言います。ここでさっきのお祭りに夕湖を誘いました。来るかどうかは一か八か。優空、親友のためにそこまで動ける人間ってそうそういないと思う。まぁこんな現状がそもそもないんだろうけど。

 そうして、夕湖はお祭りにきて、三人でお話をすることになります。ここでさっそく優空は『夕湖ちゃんはどうして朔くんに告白したの』と爆弾を落とします。ここでこのセリフを出すにはちゃんとした準備が必要でしょう。一体いつからこの言葉を仕舞っていたのか・・・。 それに対し朔は当たり前の解答をします。なぜ今なのかとは考えていた朔。ですがここで夕湖の本心に触れるかのように、本当の不自然に触れます。         『どうしてあの場で告白することを選んだのかな』『どうしてわざわざみんなの前で』そうしていつのまにか額を優空の腕に押し付け震えている夕湖、そっとその頭を撫でながら話を続けるのは、きっと夕湖の本心を優空がさらけ出す申し訳なさがあったのかなと僕は思いました。『告白がうまくいくかもって。ほんの少しでも思ってたのかな?』『あの日のことが関係してるんじゃない?』と、おそらく先ほど話した「弱さを分け合ったとき」なのでしょう。みんなのために動く優空・・・

 ここからは夕湖にとっての過去のお話。なにかを我慢しているように見える優空。でもなぜか朔の時だけは違う。朔と出会うまでの自分に重ねていたのかもしれない。優空をご飯に誘い、様子がおかしくなった優空を朔に任せた次の日、些細な変化を見付けてしまった。こうなることを望んでいたはずなのに、喉元になにかがつっかえたみたいに、呼吸が苦しくなった夕湖。きっとこの時点で優空のことを察していたんだと思います、『うっちーに朔をとられちゃう。』と。そこで夕湖は優空を屋上に呼び出して、話をします。いつの間にか夕湖は『うっちーはいま、好きな人っているの⁉ ちなみに私は朔!!』と言います。そして優空は目を泳がせ、眉間に小さなしわを寄せ、唇をぎゅっと結び、スカートを強く握りしめて、何度も深呼吸をした後に、まるでであったころのような微笑みを浮かべて『私はいないよ』と言います。きっとこの時に、「互いの弱さを分け合った」んだと思います。夕湖は自分の想いを優先するかのように、牽制するみたいに、自分の気持ちを先出す弱さ。優空はここで我慢して、仮面をつけて、『私はいないよ』という弱さを分け合ったんだと思います。朔が屋上にきて、唐突に夕湖は自分の想いを伝えます。そこで優空は肩を震わせて。ずるくて、汚くて、卑怯でわがままで。こんな身勝手をしたからこそ、夕湖の心は泣いていた。 多分夕湖はここからずっとこの気持ちを引きずっていたんでしょうね。5巻でも同じセリフを吐いたのは、きっと今回とは逆の意味。気持ちを閉じ込めさせるのではなく、気持ちを言ってもいいんだよという意味で言ったのでしょう。やはり彼女も健気です。

 夕湖は話を終え、ごめんなさい、ごめんなさいを繰り返す。今までのことを謝る夕湖。『大丈夫だいじょうぶ』と夕湖の頭を撫でる優空。そのうえでもう一度『告白がうまくいくかもって、ほんの少しでも思ってたのかな?』と聞きます。夕湖はあらん限りの声を張り上げて否定した。今までの後悔と、悠月と陽のことを話す夕湖。告白した理由を、何もかもをさらけ出す夕湖『私の大切な人が、ちゃんと自分のトクベツを大切にできるようにッッッ』と。 ようやく夕湖のすべてに気付いた朔。夕湖にとってのヒーローと、夕湖にとっての大切な友達を守るために告白をした夕湖は、自分で背負ったからという理由があったとしても、その決断と実行には計り知れない不安があったと思います。それでも実行した夕湖に、自分の想いを泣き叫んだ夕湖に、泣けないはずがありません。

 次は朔の番という優空、朔の核心に触れるかのように『どうして朔くんは断るときにわざわざあんなことを言ったの?』ときっかけを与えました。でも、それだけは言えないという朔。でも、健太が言った。悠月が言った。陽が言った。あの言葉によって、そして、自分の弱さと向き合って決着をつけた夕湖を見て、朔は話す。自分の汚さ、卑怯さ、情けなさ、かっこ悪さ。すべてを話す。そして『俺の心のなかには、夕湖がいる』『だけど』『それでも俺の心のなかには、他の女の子が、っ、いる』と。『愛されることに慣れすぎて愛し方を知らないんじゃないかな』と明日姉に言われたことを思いだす。『どの気持ちに、恋という名前をつければいいのかが、わからない』。 最終的に優空が朔を諭す。何もかも、これは朔くんが教えてくれたことなんだよと。『それでもいっしょにいたいと、想えるのなら』『手を、繋いでいようよ』と優空は言いました。

 ここで挿絵があるんですが、先ほど書いた「挿絵の重大な真実」の話をしたいと思います。実際に意図があってこうしたのかはわかりませんが、あの人ならやってそうな気がするので話します。さて、ここまでの挿絵、朔が写っている挿絵に何か違和感はありませんか? その違和感の理由について話します。ここまで朔は、朔の心の中は、どこを向いていましたか? うしろなのか、うえなのか、はたまたよこなのか。少なくともまえを向いていることはないでしょう。では挿絵を見てみましょう。朔は一度も顔を見せていません。そして今、朔と夕湖の手を優空が繋ぐシーンでは顔を見せています。朔はここでようやく前を向けたんだと思います。だから、オムライスを食べているとき、優空に寝顔を見られているとき、陽と背中を合わせているときは、顔を見せなかったんだと思います。これは勝手な僕の予想ですので、実際にそうなのかはわかりません。ですけどこれだけは言わせてください。なんてもんしかけてんだよ裕夢こんにゃろう。

 さてここでちょっと待ってと話しを遮る夕湖。今まで朔の本当の気持ちと、夕湖の気持ちがなかった。それを暴いた優空。果たして優空の気持ちはどこにあるのか。それに気づいてもらえたうれしさなのか、本当の気持ちを思い出したからなのか、それはわかりません。でも夕湖にしか気づけない。絶対必要な言葉だったのは確かです。

 夕湖は『ちゃんと話してほしい。今度こそ!』と、前回仕舞わせてしまった優空の本音を、さっき優空がしてくれたように聞き出します。優空は朔と似たような想いをしていました。この芽生えた感情は恋なのか、感謝なのかと。だから二人を言い訳にした。そして、いつかに悠月が言っていたセリフ『第一印象が最悪な美少年とは、たいてい恋が始まるものよ』と。これは悠月ではなく最終的には優空のことでしたね。お前いつからこの話想定して書いてんだよ物語は朔たちが動かしてるんじゃないのかもしかして嘘ついてるんじゃねぇよな?(すみません疑ってません許してください)

 優空は『私も、汚くて、卑怯だ』と言います。ですが夕湖は否定します。優空はあのとき夕湖を無視して朔を追いかけた。と、親友よりも大切な男の子を一番に選んだ優空に『自分も我慢してたみたいに言わないでよッ!!』と言います。ここから二人は本音を、それこそ夕湖が望んでいた親友との「けんか」を本気で始めます。でもやっぱり夕湖は優空のために嫌な言い方をしていました。やっぱり夕湖はいい子です。こんないい子は他にはいません。自分の犯した過ちを、自分で気づいて正そうとする。それを強さと言わずになんといえばいいんでしょうか。シクシク

 きっとこのセリフは、優空や夕湖じゃなく、朔にも言えることなんでしょう『私を見つけてくれてありがとう』を。ここからはもう、優空は素直に話すことしかできません。二人で素直に、本音を話す。互いは互いに一番じゃない。でも、それを伝えあったからこそ、二人は元通りに、いや、二人はいつものように、でも少しちがう風に、話し合えるようになったんだと思います。二人の女の子は、また親友となりました。このシーンを見れただけでも、この6巻に意味はあると思います。女の子が泣く姿に、泣かないはずがないんです。

 朔に対して言いたいことを言う夕湖。朔の好きと嫌いを並べる夕湖、そのあとに、優空も習って朔に言う。わがままになってもいいかなという優空。最後に朔。夕湖の告白をなかったことにしたくないと、この夏を、ちゃんと胸に刻んでおきたいと。いつか答えが出たとき、ふたりが「ラムネの瓶のなかに沈んだビー玉の月」を『取り出してくれたから』朔は夕湖に対して『そのときは、俺のほうから、好きだと伝えてもいいかな』と言いました。読み返しながら書くのには時間がかかるけど、その分やっぱ気づきもあるわけで、それこそ今この『取り出してくれたから』というセリフの意味は今気づいたものです。ですのでやはりこのやり方は時間をかけてやるべきものだと確信できました。

 お祭りに行く三人。優空が朔に対して、浴衣の感想くれなかったことに腹を立て、朔が言わなかった理由を話し、夕湖がめんどくさと言います。そのあと優空がその理由を言い、夕湖が素で『え、きも』と、前の関係のように話している姿は、もちろん笑いましたし、何よりも安心できました。夕湖を見つけた鳥居にもどると、そこにはみんながいました。優空がみんなに声をかけ、そこには明日姉もいました。結局二人でデートする気はないと言った夕湖に対し、お面を頭の横につける優空。絶対かわいいじゃん。見せてほしいコン。 陽といつも通りに言葉を交わし、明日姉が照れくさそうに目を伏せでぎこちないやり取りを交わすのはめちゃかわいいです。コミカライズなりアニメなり永遠に待つんで楽しみにしてます。悠月のエプロン姿の感想の件について謝る朔、似合ってるって言われて泣きだしそうに顔を歪める悠月、そしていつもの軽口をたたかれ、べえーっと舌を出して可笑しそうに肩を揺らす悠月。いやもう乙女じゃん。見たことない七瀬悠月がどんどん更新されていくじゃん。べえーっと舌を出すシーン見てみたい。 海人と話す朔、しっかりと脇腹を左で殴り仲直り。男っぽいな。それで済むなら最初からしとけと言う和希、相互理解してきたぞと健太に言う朔。 そこからは、祭りを楽しむだけ。最後には手持ち花火をみんなでする。『また、来年』と頷くように、線香花火がぽとりと落ち、物語の幕も落ちる。

 最後、5巻にはなかった夕湖と、今回のメインを飾った優空のエピローグ。こうして6巻は幕を閉じました。

 

 長ったらしく書いた感想ももうすぐ終わりですね。5巻から続いた夏の思い出。そのすべてに幕が下りました。皆さん思うところはあると思いますが、僕のかけるすべてをここに書き記したつもりです。最初は書いても一万字くらいかなと思っていた感想ですが、物語の内容でも字数を稼いでいるのでちょっとアレですが、いつの間にか二万二千字まで書いています。前回に引き続きちゃんと「裕夢こんにゃろう」が言えたのは、しっかりと裕夢先生がそんな場面を作ってくれていたからなので、これは裕夢先生に感謝です。 時間を空けているので正確な時間は分かりませんが、8時間ほどかけて描いたこの感想をここまで読んでくれた読者の方。そして、この作品を描いた裕夢先生。この作品に色を足してくれたraemz先生。最後に、この作品を世に出してくれた岩浅さん。

            ありがとうよりも、ありがとう

裕夢先生、時間をかけて休んでから次巻、6.5巻を書いてくださいね。ここまでの文字数は書けないと思いますが、しっかりと感想書いていきますので楽しみにしています!  それでは、また別の記事でお会いしましょう。

 

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